なめこの味噌汁

 食卓の上に湯気のたつ茶碗が置いてある。

 なめこの味噌汁だった。赤味噌の汁に豆腐、わかめ、白菜、なめこが少し顔を出して沈んでいる。

 箸でかき回すと具材がぐるぐる回って味噌が茶碗全体に行き渡る。

 箸の先を舐める。一口すする。濃い味が胃に染みる。豆腐の柔らかさとなめこの弾力ある食感が心地よい。

 

ぶり大根

 ぶり大根を食べた。

 汁をたっぷり吸って濃いキツネ色になった大根と皮付きのぶりが寄り添いながら盛り付けられている。

 ぶりの身に箸を入れると、ふわっと崩れる。崩れた身は皿の下に溜まっただし汁に浸かる。

 大根にもすっと箸が入って二つにわかれる。半分になった大根とほぐれたぶりの身を一緒にとって口に入れる。

 甘い味と香りが広がった。二つの具材があっという間にとろけてしまう。

 熱々の白ごはんをかきいれる。だし汁が米つぶに染みてくる。

 白米と大根とぶりの柔らかな感触が口の中で踊る。

 飲み込んだあともそれらは舌の上に残り続ける。

 麦茶を飲む。

 また食べる。

 漬物も食べる。

 最後に残ったぶりを食べる。

 今日はこれで満腹になった。

あんぱん

 あんぱんを食べた。

 ふっくらした生地の中にこしあんが詰まっていた。

 舌触りはなめらかでもさもさした生地の中であんの甘さが際立っていた。

 飲み込まないうちに牛乳を口に含む。

 牛乳は噛み砕かれたあんと生地に染み込んで、解けた甘さが滲み出る。

 飲み込む感触は快感に近い。何もなくなってしまった口は甘さで満たされている。

 また、一個口に頬張った。  

味噌煮込みうどん

 今日は味噌煮込みうどんを食べた。

 食卓にいくとコンロの火に乗った鍋がぐつぐつ煮え立っていた。味噌の染みたスープと揚げ、ネギ、白菜、うどんから湯気が天井に届くほど立ちのぼっている。

 席について、まずお茶を入れた。一口飲む。それから取り皿に煮えた具材を入れていき、あとからスープを注いで具材を沈ませる。

 鍋の湯気と比べると小さいけれど、もうもうと勢いのある湯気が立っている。

 うどんをふうふうしてから啜る。最後啜るとき、麺が揺れて汁が飛んだ。服の袖に一滴二滴かかった。

 揚げを食べると口の中に味噌の出汁が染み渡る。ネギと白菜はしゃきしゃきとした食感を与えてくれる。

 ごはんがほしくなって茶碗に半分炊き立ての白米をよそった。こちらの湯気も味噌煮込みうどんに負けないぐらい揺れながら立ちのぼっていた。

 ごはんの上に具材を乗せ味噌を染み込ませてから頬張ると、また格別においしい。

 うどんと合わせて2杯ぶんは食べたかも。

 味噌の暖かさが冷たい体に染み渡る、そんな晩食。

 

 

※書いてて思ったけど、ごはんをよそうなのか、よそるなのかわからなくなって調べてみた。どうやら両方正しいらしい。

 でも1000年以上も前から使われているのは、よそう、のほうだった。

 意味は食事の支度をする、整える。

 そこから食べ物を食器に盛るという意味に変わったそう。

あと、よそうとよそるのほかにも、ごはんを盛る、ごはんをつぐなんて表現もあるみたいだけど、地方によって優劣があるみたい。

 

恵方巻

 今日は恵方巻を食べた。

 丸太みたいに太くて、巻かれた海苔はびっちりと白米にくっついている。

 具はサーモン、キュウリ、青じそ。片側だけサーモンが飛び出していて、飛び出していたサーモンに電気の光が当たって表面からでもわかる脂が身の上でテカテカ光っていた。

 手で食べようかと思ったけど、手を洗わなきゃいけないし食べた後も洗わないといけないので、箸で挟んで食べた。

 今年向かなきゃいけない方角は忘れた。だから食卓の正面を向いて食べる。一口では食べれなかった。半分くらい口に入れて噛み千切る。もぐもぐする。

サーモンの噛みごたえが心地よい。噛むたびに脂があふれ出して唾液と絡み、頬の裏側をサーモンの甘味で満たしてくれる。キュウリもシャキシャキしていている。

 青じそもよいアクセントだ。あっという間に食べ終わってしまう。

 一個しかなかったけど、もう一本食べたいと思った。

 

随分前になるが、ゲームばかりして働かない息子を持つ父親が、息子の部屋から持ち出したゲームのカセットを庭に置き、それを芝刈り機で粉砕するという動画がネットにアップされ話題にもなった。

やらせの疑惑もあるようだが、現実問題、仕事もせずゲームに明け暮れている我が子を持つ親ならば、ゲーム自体を壊してやりたい気持ちもわからなくはない。

そんな中、米海軍の攻撃型原子力潜水艦として就役したコロラドが、家庭用ゲーム機Xboxのコントローラーを、操縦かんに代わって採用した。

攻撃型潜水艦にゲームコントローラーが採用されるのは初めてで、目的はコスト削減。

市販されている民生品は大勢の人たちの手に触れる機会も多く、特にゲーム機となると、若い乗組員は誰しも慣れ親しんだ経験を持っている。そんな彼らにとって、Xboxの採用は使いやすいと評判らしい。これまでコントローラーで潜水艦を操縦するには画面の中でしかできなかった。今や実際に操縦できるというのだから、すごい時代になったものだ。

長らくゲームは文化として低い位置にあった。しかし近年、ハウスオブカードにおける主人公フランクのプレイするゲームが、物語上の暗喩としての機能をはたしていたり、今回のゲーム感覚で潜水艦を操作できるようになったりと、今や表現や軍事行動の分野にまで浸透してきている。これはゲームが文化や人間をサポートしえる存在として認められつつある証である。これからも様々な形で発展、活用されていくだろう。

親としても、我が子が部屋に引きこもり、画面の前でコントローラーを握っているよりも、潜水艦の潜望鏡の前でコントローラーを握っている姿を見るほうが、頼もしく思えるかもしれない。

 

参照:中日新聞

 

就役(しゅうえき)……新造の艦船が任務につくこと。

潜望鏡(せんぼうきょう)……潜水中の潜水艦などから筒先だけを水面上に出して、海上の様子を見る装置。